「ありえるかもしれない、ガムラン」無事に終了しました!初演した「SinRa」の作曲者でつむぎね主宰の宮内康乃の振り返りレポートです。
おかげさまで、自身のガムランとつむぎねのコラボ作品「S i n R a」の初演も無事に終わり、お客さんたちにも参加していただき生み出された美しい森の風景とともに、素晴らしい演奏が立ち昇りました。
また多くの嬉しい感想をいただけて、皆さんの心に響いたことがとても嬉しく感無量です。
まずは、この素晴らしい演奏をしてくださった、マルガサリの皆さんに心から感謝です!これだけ毛色の違う5人の作曲家のガムラン曲を、全て引き受け、それを見事にそれぞれの個性を生かして形にした彼らはとんでもない仕事をやってのけたと思います。
そして、どの作品にも同じ熱量で、作曲家と丁寧に向き合って、さらにとても楽しんで取り組んでくださるその姿勢は、心から脱帽です。
私は彼らと出会えたことが、今回のいちばんの収穫だったと心から思っています。
超絶ハードなスケジュールで、東京滞在の数日間は全く余白のないほどリハーサルやステージでのパフォーマンスが詰まっていて、本番当日も朝9時から夜9時まで、ほぼ演奏しっぱなしだった彼らのその体力と精神力も信じられません。本当にありがとうございました!
また、今回も一緒に参加して支えてくれた、つむぎねのメンバーにも心から感謝です。思えば活動開始から15年、ついにサントリーホールの舞台にまで辿り着いたことも感無量ですが、いつもともに音を紡ぎ、時に的確な指摘や改善案をぶつけてくれる仲間たちが一緒だったことは、私にとってどれだけ心強かったかしれません。ありがとう!
実は、今回冒頭にやった声のワークショップでお客さんを巻き込む案は、当初やるつもりはありませんでした。コロナ禍でそう言った取り組みは一切できなくなってしまった感覚を引きずっていましたし、何より今回は大きな舞台で、演奏者も多く、自分も参加すると客観的に聴けないからと、私は出演せず客席から見守るつもりでした。
そんな中、野村誠さんがご自身のプログラムノートをシェアしてくださり、それを読んで、彼が何を考えてそれぞれの要素を取り入れ、それを一つにしようとしているのかが分かり、彼がこの機会に自分が考えること、目指す世界を全てぶつけて真摯に伝えようとしていることに感銘を受けました。
そう思うと、私は今回このコンサートを通して何を伝えたいのだろうか?三輪氏、中川氏から提示された「これはコンサートではありません。未来の音楽や社会を考えるためのフォーラムです」という言葉に対して、私はどういう方法なら自分の考えを形にできるか?を改めて考えたとき、私がこれまで取り組んできた、誰もが参加でき、観客と演者の垣根を越えて一つになれる響きを作る、ワークショップの取り組みをすること、また、作曲家が外から演奏を見て指示を出すという旧来のあり方ではなく、自身も響きの一部としてともに音を紡ぐというあり方をするべきだと考え、あの表現にたどり着きました。
結果、観客もともに音を出し、サントリーホール全体が一つの響きになることができたことは、本当に挑戦してよかったと思います。
また、ゲネプロでは正直ものすごく自信を失いかけました。というのも、客席に行って聞いてみると、演奏が思いの外客席に届かず、まるで遠くでやっている祭りをぼんやり見ているような、熱量の届かなさを感じたからです。西洋楽器とガムランでは、音の届く方向が違うようで、ガムランは上に響きが上っていくからのようでした。
悔しいかな、私の音楽はこのような西洋音楽のための立派なコンサートホールにはやはり相応しくないのか、、と落ち込みかけたのですが、ゲネを終えて演奏家たちもそれぞれ改善に工夫を凝らしてくれたこと、また、不思議なもので朝一のゲネから演奏を続けるとともに、楽器もホール自体もどんどん響いてきて、空間と馴染んでいった印象がありました。
結果、夜の本番には空間と響きがマッチして、お客さんに届く響きになったと感じます。
ガムランとの出会い、そしてマルガサリとの出会いは、私自身の新たなステップの大きな糸口となりそうです。中川さんや、すばらしいルバブの演奏をしてくださったほんまなほさんには、リハーサルを通して、ガムラン音楽の重要な部分をたくさん教えていただくことができた気がします。そして、最後に、師匠であり、この機会を作ってくださった、三輪眞弘氏に心より感謝いたします。
素晴らしいルバブ演奏をしてくださった、とっても素敵なほんまなほさんと。
今後も、ガムランのはるか遥か深い真髄に少しでも近づいていけるよう、古典の勉強もコツコツ続けつつ、ガムランを通して、未来の音楽のあり方、社会との繋がり方を私なりに追求して行けたらと思います。
観にきてくださった皆さま、一緒に音楽を紡いでくださり、ありがとうございました!