わ・つむぎプロジェクト「声を聴くワークショップ」レポート

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主宰・宮内康乃が今年度アサヒ・アートスクエアのグローアップ・アーティストに選出され、老若男女さまざまな人々と声をつむぐ「わ・つむぎプロジェクト」にて、10-12月に毎月1回、3回シリーズで連続ワークショップを実施しました。
人それぞれのさまざまな「ちがい」を、まるで楽器の音色のちがいのように活かせないか、その可能性に取り組むワークショップ。3回さまざまな切り口から「違い」がどう響きに表れるかを検証しました。

第1回目のテーマは、「姿は見えねど、声は語る」と題して、真っ暗闇でとなりがどんな人かもわからない中、声を重ねるワークショップを行いました。
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真っ暗闇で姿は見えないけれど、となりの人の声を聞いて、その性別、年代、性格や体格などある程度把握できるのでは?また先入観なく、プライバシーも気にせず、声だけでコミュニケーションとることに挑戦しました。

真っ暗な中1人ずつ入場したので、もちろんおしゃべりもできず、はじめは静まり返って緊張感が張り詰めていた会場内、ワークが始まり、少しずつ声を出していくことで、だんだんお互いの存在が感じられ、声を聴きあい、重ねることで自然と笑いが生まれていきました。

ワークでは、20代の人、40代の人、など世代ごとに声を重ねたり、男性だけ、女性だけと声を重ねてみると、同じ高さの音を出しても男女の質の違いはもちろん感じられ、さらに世代ごとも20代は初々しく、30,40代は力づよく、50代以上は安定感がある、など、声だけでも違いが現れました。
最後に「声の森」と称して、自由に声を重ねるシーンでは、暗闇での開放感も手伝って、みんな激しく野生に帰り、ものすごく力強い響きとなりました。みな日常では出せない野生性が現れたようで、大変面白い響きとなりました。
写真は全てのワークを終え、少しずつ光を入れていくところ、また最後のアンケートとフィードバックです。

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2回目は、「男vs女!」
男女の違いに徹底的に取り組みました。
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男女に分かれて全く同じお題を出し、出てくる表現の違い、発想の違いを検証しました。
最後は、部屋も分かれてそれぞれ「男祭り」「女祭り」を作っていただき、お互いのものを発表しあいました!
男性は静謐な始まりから力強いラストへとボルテージを上げていく美しいパフォーマンス、女性はユーモアと楽しさが結集したかわいらしいパフォーマンス、と全く違うものが浮かび上がりました。
ラストはさらに、お互いの歌で歌合戦。最後は全員が同じ声にシンクロし、大変盛り上がりました。
たしかに男女の違いは声の高さの違いだけではなく、発想やプロセスの違いにも歴然と出ました。しかし、その一方で、男女の違いというより、人間としてという根源的なものを感じたり、お互いの魅力を再確認し、両者いるから調和するのだと実感したりしました。

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第3回目は、「わたしは◯◯、あなたは▲▲」
3回目はさらに、社会的な立場の違いにフォーカスしました。年齢や性別だけでなく、職業の違い、性格の違いがどのように音に反映するのか、という取り組みでした。
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簡単なアンケートに答えてもらい、それで積極的で目立つのが好きなタイプ、逆にどちらかというと引っ込み思案タイプ、ちょうど中立なタイプ、と3つのチームに分かれて同じお題を出したところ、その違いは面白いほど明確に表れました!
積極的グループはどんどんと意見を出してあっという間に決まり、動きもつけてどんどんと進めていき、中立タイプはその様子を冷静に見ながら彼らとの差別化を意識して内容を考え、おとなしいグループは、全員でていねいに考え、調和を意識して取り組んでいました。

その後、職業による違い、職業柄よく使う声はなに?などを話し合いました。
今回は主宰・宮内のたっての希望によりお坊さん方が5人ほど参加くださいましたが、お坊さんのように職業柄使う特殊な声がある人もいれば、一人作業で仕事中はほとんど声を出さない人もいて、なかなか難しい課題となりました。
また、実際に現場で自然に出るモードに意識的に持っていくのは難しい部分もあり、そこは課題が残りました。
最後に円になり、なんでもバスケットのように一人ずつお題を出しながら該当する人が声を出していきました。ラストはだんだんと照明を落とし、社会的な殻を破って、1回目のような声の森へと回帰していきました。

課題も残りましたが、例えばお坊さんと小学生と保育士さんが一緒に集まり、同じ目線でともに取り組む、というような日常ではなかなか出会わない取り合わせのコラボレーションが実現し、そうやって社会的な立場や年齢、性別関係なくコミュニケーションをするきっかけを作ることができたのも、音楽がコミュニケーションツールになる、という最も大きなテーマが達成できた結果となり、嬉しく感じました。

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3回シリーズでさまざまな実験に取り組めたことはとても大きな機会となりました。本当にグローアップ・アーティストとしてこのような機会をいただけたことに感謝いたします。まさにグローアップの機会となりました。

今回得た多くのことを踏まえて、来月2/20,21に最終発表を行います。
20日には1年間の活動報告会を、21日には参加者の人と作るパフォーマンスの発表と、人間の日常の行動を研究するユニークな研究者の細馬宏通さんをゲストに招いてのトークイベントも行います。
奇しくも、アサヒ・アートスクエアがこの3月で閉鎖されることとなり、最後のグローアップ・アーティストとなってしまいましたので、アートスクエアの最後を飾る、奉納祭りのようなイベントにできればと思っています。
ぜひ老若男女多くの皆様に参加いただければと願っています。また詳細はアップさせていただきます。

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